目次

1 遺産分割で損しないための方法と注意点

その遺産分割協議書、印鑑を押すのはちょっと待った!
ちょっと待った!
遺産分割協議が終わってしまってから、こんな遺産分割にサインしなければよかったと後悔している人がたくさんいます。遺産分割協議書が次のような内容の場合は、印鑑を押す前に弁護士に相談されることをお勧めします。

(1) 不動産の評価が固定資産税の評価額

遺産分割協議において、不動産を固定資産税の評価額で評価している場合が散見されます。
弁護士以外の士業(税理士さんや司法書士さん)が作ってくれる遺産分割協議案の中には固定資産評価を基準として遺産分割協議書を作ってあるケースがあります。
しかし、固定資産評価額は、土地、特に、軍用地等は、不動産の市場で取引されている価値よりずっと低い額です。
ですから、固定資産税などを基準に不動産を評価した遺産分割協議案はお勧めしません。一度は、不動産価値に詳しい弁護士に相談してください。

固定資産評価証明書

(2) 預貯金の分け方が、金額で記載されている

「Aの銀行の口座番号○○の預金500万のうち300万は長男に。残りの200万は次女に。」というような分け方を記載している場合、銀行の預金を解約することができない場合があります。
なぜなら、遺産分割協議が成立しても、銀行預金の残高は、わずかながらでも利息などで変動するためです。
そのような場合、もう一度、揉めていた相続人全員とコンタクトをとり、預金引き出しのための書類に署名したり印鑑を押さなければならないという羽目になります。
このような一つの口座に入っている預金を分ける場合、金融機関において、他の相続人を絡ませずに引き出せるような遺産分割協議書の記載方法がありますので、弁護士に遺産分割協議をお願いしたほうが無難です。

(3) 生前の贈与を正しく載せていない

相続人の中には、生前に親から多額の預金を分けてもらっている人や、軍用地を買ってもらった人、家を建ててもらっている人など、特別の受益を受けている人がいることがあります。
このような人の特別受益を加味せずに作られた遺産分割協議書に印鑑を押すと、もしかすると何千万単位で損をする可能性があります。
特別受益についての解説はこちら

(4) 死後に支払った病院代や固定資産税などを加味していない

相続発生後=被相続人が死亡してから誰かが負担した固定資産税や火葬費用などを遺産分割で考慮されていないと、このような費用を負担した相続人が後から文句を言ったり、相続トラブルが蒸し返されたりします。
このような費用のうち何を相続人で負担し、何が喪主の負担なのか、相続に詳しい弁護士に相談してください。

(5) 印鑑を押しても自分の勘違いなら無効にできる?

遺産分割協議書は一度印鑑を押してしまったら、裁判で覆すのは非常に難しいです。
上記(1)~(5)でご紹介したような遺産分割協議書の場合、あなたが損をする可能性や、もう一度紛争が蒸し返される場合もありますので、遺産分割協議書に印鑑を押す前に一度は弁護士に相談してください。

2 遺産分割が泥沼化しやすい理由と解決策

遺産を分ける話になると、どうしても仲の良い兄弟で揉めて険悪な関係になることがあります。それは、家族という密接な人間関係のため、不平不満をぶつけたくなるからです。

不平不満

例えば、相続の分割に影響する、「お兄ちゃんは、親からこんだけ援助を受けた」とか、「家を建ててもらった」といった事情以外の、親に暴言を吐いた、とか、葬式の時に来なかったとか、遺産分割に関係ない事情と関係ある事情を当事者だと分けられず、下手をするとお互いの悪口合戦のようになってしまうからです。

また、親などの被相続人から、ほかの相続人が生前どれだけもらっているかは、家族とはいえ、細かい金額まではお互いわかりません。

ここで隠し事をする・又はしていると相手に受け止められると、協議がまとまらなかったり、もめる原因となります。特に相続の場合は、揉めている相手方のほうが、生前より多くもらっている、たくさんのお金を引き出しているなどと思いがちなので、少しでも隠していると、相手方はもっともらっているだろうと想像してしまうという事はあります。

それでは具体的に、遺産分割の話し合いはどのように行えばいいのでしょうか。

遺産分割の具体的なやり方とは?基本手順と注意点を解説

(1) 相続人の範囲と持ち分を確定する

相続イメージ

ア 戸籍の取り寄せと相続人の確認

相続人を確定するためには、市役所で被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得します。複数の市区町村にまたがることもあり、再婚や認知された子など、これまで知らなかった相続人が判明するケースもあります。当事務所では戸籍収集や相続人の調査も承っております。

イ 相続人の住所の調査

戸籍を基に附票を取得することで、相続人の現住所を特定できます。
相続人の所在が不明な場合は、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の申し立ても検討されます。

不在者財産管理人についてはこちら
失踪宣告についてはこちら

(2) 被相続人の財産を全て開示する

預貯金、現金、不動産、株式、出資金などをリストアップし、各資産の評価額を記載します。

ア 預貯金

相続時点の残高だけでなく、死後の支出(葬儀費用や税金、公共料金など)も明記して、相続人間での費用負担について協議します。
また、生前の管理や支出についても明らかにしておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
なお、被相続人の生前の預金について、生活費を預かり管理していた人はなるべくこれも開示した方が良いです。
これを隠していると必ずトラブルになります。

そして、被相続人のために幾ら使ったかなどの説明をする方が後々もめないコツです。
預金の使い込みについてはこちら

イ 不動産

名寄帳を取り寄せると、不動産の所在を詳細に把握できます。
評価は時価を基準に行い、不動産会社による査定が推奨されます。
なお、当事務所では市場価値の概算や提携先の不動産業者による査定も対応可能です。
不動産の評価の時期についてはこちら

ウ 負債

固定資産税や未納の税金、借入金などの負債も相続財産の一部として扱います。
遺産の調査についてはこちら

負債が多い場合には、3か月以内に相続放棄を検討することも重要です。
相続放棄の手順についてはこちら

(3) 不動産の分け方を先に決める

相続財産に不動産が含まれる場合、まずは不動産の分配方法を検討するのが一般的です。
特に沖縄では「とーとーめ(位牌)」のある家を長男が相続するという風習がありますが、これにこだわりすぎると協議が難航する場合もあります。

利用予定のない不動産については、できるだけ早期に売却して換価分割を行うことが望ましいです。
不動産は耐用年数を超えると売却が難しくなります。また、先祖代々の土地に対しては親族からの反対意見が出ることもあるため、地域的な背景に詳しい弁護士へ早めに相談することが重要です。
特に軍用地など、市場価値と固定資産税評価額に大きな乖離がある不動産は、固定資産評価額での分割を避けるべきです。

(4) 残った財産の分配方法を決める

不動産を先に配分した後、残った預貯金や現金について分配方法を決定します。
不動産の相続によって相続財産の偏りがある場合は、代償金の支払いや、負債の引受けで調整することが一般的です。

ただし、相続財産が不動産のみの場合は、代償金を用意するのが難しいこともあります。
その場合は不動産を売却し、得た金銭を分ける「換価分割」が有効な手段となります。

(5) 遺産分割協議書を作成する

遺産分割協議書は、後々のトラブルを防ぐためにも慎重に作成する必要があります。
相手方が用意した協議書に安易に印鑑を押すと、後に内容に不満が生じても覆すことが非常に難しくなります

税理士など他士業が作成する場合もありますが、法律的な有効性や将来的なリスクを考慮するなら、弁護士に内容を確認してもらうことをおすすめします。
不明点がある場合は、印鑑を押す前に必ず専門家にご相談ください。
遺産分割協議書の作成についてはこちら

3 当事者同士で話し合うデメリット

当事者同士でも遺産分割はできます。しかし、次のようなデメリットがあります。
 
落ち込み

(1) 兄弟間の仲が悪くなる

遺産分割とは関係ないことを持ち出して感情的になりがちです。
遺産分割がきっかけで仲が悪くなる兄弟はたくさんいます。

(2) 不動産の価値がわからず損をする

不動産評価は固定資産税評価額や税務申告の価値と実際の価値は全く異なります。
特に軍用地は驚くほど違います。そのため、市場価値がわからないままの遺産分割で、非常に損をする人がいます。

(3) 上手な分け方がわからず、紛争が長期化する

不動産の分け方にはコツがありますが、大体の市場価値や売れるか売れないかなどについて経験も知識もないと、誰も具体的にどう分ければいいかという話もできず、遺産分割がまとまらないで長期化するという事があります。

(4) 遺産分割協議書の有効な作り方がそもそもわからない

遺産分割後に新しい財産が出てきたとき、どう表現しようか、代償金をどう設計すればよいか、銀行預金を払い戻すためにはどのように書けばいいか、固定資産税はどう清算すればよいか、という点については専門家が作った遺産分割協議書でなければ思わぬところで手間がかかったり下手をするとせっかくまとまった協議も無効となってしまいます。

(5) 遺産分割調停でも解決までには時間を要する

調停自体は本人で申立をして手続きをすることが出来ますが、とても時間がかかります(1年から2年)。
また、戸籍をそろえたり登記をそろえたり、話し合いに出席するなども手間と時間がかかります。

(6) 声が小さい人が損をする

当事者間の話し合いでは声が小さい人が不利・不公平な案を押し付けられることもあります。
特に沖縄の遺産分割では、当事者同士の話し合いによる遺産分割だと、女性は嫁に行ったのでもらわないでよいとか、長男が大事という観点から非常に損をすることがあります。

4 遺産分割協議を弁護士に頼むメリット

喜び

(1) 兄弟間の精神的な対立をシャットアウト

弁護士を遺産分割の代理人にすれば、遺産分割協議において、軍用地の価値や生前贈与といった、遺産分割において必要な主張だけを伝えて、相手方からの感情的な主張をブロックします。ですから、当事者で直接話し合いをするよりも、ずっと揉めずに円満に遺産分割を進められます。

(2) 不動産の処分や遺産分割のアイディアを持っている

弁護士は、遺産分割をやり慣れていますから、これが調停まで揉めたらどうなるかという事や、具体的に不動産を売ってみたらどうなるか、分筆し直したらどうなるか、といった沢山の解決事例や見通しを持っています。
ですので、当事者でもめるよりスムーズで円満な遺産分割の方法を提案できます。

(3) 不動産の価値や相続人を調べるなどの手間もかからない

遺産分割をするには、まず相続人の範囲を調べたり、預貯金や不動産の価値を調べる必要があります。これを会社を抜け出して、市役所を回ったり、不動産屋さんを探すのもとても手間がかかります。
しかし、弁護士に頼めばこれらの手続きは不要です。

(4) 法的に有効な遺産分割協議書が作成できる

弁護士に頼めば、しっかりと有効な遺産分割協議書を作成できます。

(5) 声が小さい人が損をしない

遺産分割協議を当事者で行うと、おとなしい人や声が小さい人が損をしてしまうことがあります。
しかし、弁護士を代理人にして遺産分割協議を行えば、公平な遺産分割が可能です。また親族間の精神的な対立避けることが出来ます
声の小さい人の声も適切に代理して相手に伝えることができます。
 
那覇市・沖縄市・うるま市に事務所を構える弁護士法人ニライ総合法律事務所では、地域に根ざした法律サービスを提供しており、遺言や相続に関するご相談を多数取り扱っております。
初回30分の無料相談をご利用いただけますので、相続や遺言書の作成でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
経験豊富な弁護士が、専門的な知識と実績をもとに丁寧にサポートいたします。

ご予約・お問い合わせは、こちら。