はじめに

遺言は、自身の大切な財産を、家族や関係者に確実に引き継ぐための重要な手段です。
なかでも「公正証書遺言」は、法的な確実性や安全性に優れており、多くの方に利用されています。
本記事では、公正証書遺言の特徴や作成方法、費用、注意点、作成例に至るまで、実務的な視点から分かりやすく解説します。
相続でのトラブルを避け、遺された家族が円満に手続きを進められるよう、ぜひ参考にしてください。

公証人役場で公正証書遺言作成を申し込む人

目次

1 公正証書遺言とは

公正証書遺言とは何か

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に内容を確認してもらい、作成される遺言のことです。
作成された遺言書は公証役場に保管されます。

公正証書遺言の作成の流れ

まず、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、遺言書の案を作成してもらいます。
内容が確定したら、公証役場と日程を調整し、文言を最終的に整えたうえで作成日を決定します。

当日は、遺言者と証人2人以上が公証役場に赴き、遺言者が内容を公証人に伝え、公証人がそれを文書化します。
その内容を遺言者と証人に読み聞かせまたは閲覧させた後、全員が署名押印して完成します。
遺言者が署名できない場合は、公証人がその理由を記載して代筆することも可能です。

遺言者と証人2人

証人になれる人・なれない人

民法974条により、以下の者は証人・立会人になることができません。

  • 未成年者
  • 推定相続人・受遺者およびその配偶者・直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

証人には弁護士を立てるのが最も安全です
ニライ総合法律事務所では、弁護士2名を証人として公正証書を作成できます。
のちに遺言の有効性が争われた場合、弁護士が立ち会っていた事実は極めて有利に働きます

作成にかかる費用・実費

以下は日本公証人連合会による手数料の目安です。

目的価額 手数料
100万円以下 5,000円
100万円超~200万円以下 7,000円
200万円超~500万円以下 11,000円
500万円超~1,000万円以下 17,000円
1,000万円超~3,000万円以下 23,000円
3,000万円超~5,000万円以下 29,000円
5,000万円超~1億円以下 43,000円
1億円超~3億円以下 加算制:13,000円/5,000万円
3億円超~10億円以下 加算制:11,000円/5,000万円
10億円超 加算制:8,000円/5,000万円

 
【外部リンク】日本公証人連合会 ホームページ

2 公正証書遺言の特徴

メリット

  • 改ざんや紛失のリスクがない
  • 家庭裁判所での検認が不要
  • 公証人の関与により無効リスクが極めて低い

デメリット

  • 遺言内容が証人・公証人に知られる
  • 費用と手続きの手間がかかる

3 公正証書遺言をおすすめするケース

典型的なケース

相続人間の争いが懸念される場合、財産が高額で配分に細かな指定が必要な場合などには、公正証書遺言の作成が有効です。

病気や障害で自筆が難しい方へ

病気やケガ、障害などにより自筆で遺言書を作成することが難しい方でも、公正証書遺言であれば作成することが可能です。

たとえば、口がきけない方や耳が聞こえない方であっても、現在の法律のもとでは適切な方法で意思を伝えることにより、公正証書遺言を作成できます。平成12年の民法改正により、以下のような代替措置が認められています。

  • 口のきけない方:手が使える方は筆談(自書)により、手が不自由な場合は通訳人を通じた意思伝達により、公証人に意思を伝えることで作成可能です。
  • 耳が聞こえない方:読み聞かせの代わりに、通訳人による通訳または内容の閲覧により内容確認ができます。

また、入院中など外出が困難な場合でも、公証人が病院等へ出張し、現地で遺言の作成に立ち会うことも可能です。

声による伝達ができなくても、意思表示の手段さえ確保できれば、公正証書遺言の作成は可能ですので、早めに専門家へ相談されることをおすすめします。

  • コロナ禍等の影響により、面会人数や面会時間を制限している病院や施設も多いため、証人や立会人を含めた関係者の人数・滞在時間が最小限で済むよう、事前に施設側と調整・確認をしておくことが重要です。

なお、病気や事故などで死亡の危険が迫っており、通常の自筆証書遺言や公正証書遺言を作成する時間的余裕がない場合には、「危急時遺言」と呼ばれる特別な方式の遺言が認められています。
ただし、危急時遺言は作成後に家庭裁判所での検認手続が必要で、要件や手続きが厳格で無効リスクもあるため、可能な限り平常時に公正証書遺言を作成しておくことが望ましいです。

入院中の方

4 作成前に検討すべきポイント

  • 不動産の相続方法
    相続人間の共有にならないよう、誰がどの不動産を相続するか明確にする。
  • 生前の援助・貸付金の処理
    多額の援助を受けている相続人について、その扱いを明確に。
  • 遺留分侵害の有無
    不公平な配分が遺留分侵害に当たらないように配慮する。
  • 相続人への説明責任
    遺言内容に納得感があるよう、事前に説明しておくのが望ましい。

【関連記事】遺留分とは?|沖縄の相続に強い弁護士がわかりやすく解説

5 遺言書で指定すべき事項

相続財産の配分以外にも、以下の内容を検討しましょう。

  • 祭祀承継者の指定
  • 遺言執行者の指定

【関連記事】遺言執行者を付けるべき場合はどういう時?遺言執行者とは何かわかりやすく解説。

6 遺言公正証書のひな型

7 まとめ

公正証書遺言は、遺言内容の確実な実現やトラブル回避のために、非常に有効な手段です。
作成には専門家の助言や証人の立ち会い、公証人の関与が必要であり、一定の費用や手間も伴いますが、それに見合うメリットが得られます。

特に相続人間の関係が複雑であったり、財産が高額・多岐にわたる場合には、早めに準備を進めることが重要です。
ご自身やご家族の安心のためにも、内容をしっかり整えた遺言を残すことをぜひご検討のうえ、公正証書遺言の活用をご判断ください。

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