遺言書が出てきた場合、どのような遺言書は無効となるのでしょうか。

1 認知症と診断されていた親が遺言書を書いた場合

認知症とすでに診断されていた親が遺言書を作成していた時に、その遺言は有効になるのでしょうか。

よくあるのは,遺言書を作成された時点において,遺言者の方の意思能力がないと判断されるような場合です。具体的には,遺言を作成した時点で,認知症などを発症しているケースなどです。実は認知症と診断された人が遺言書を書いたからと言って、全て無効になるわけではありません。

具体的な意思能力の判断はそのケースごとに結論は様々ですが,次のようなことが判断の対象になります。

⑴ 遺言書を書いた当時のカルテや,長谷川式簡易スケールテストの結果 介護認定の資料

認知症であった場合、カルテにはdimentia+という記載が書かれています。また、長谷川式簡易スケールというテストを実施して認知症を判断することが多く、この判断については、20点/30点で、認知症の疑いありとされています。また、介護認定などの各種資料から総合しての判断となることが多いと思われます。

なお、認知症になっていれば直ちに無効となるわけではありませんし、裁判で争われた場合にぎりぎりの判断となるものが多々あると思われます。

⑵ そのような遺言書を書いた時の人間関係、遺言を書いた動機

例えば、長女夫婦が同居して、世話をしていた場合に、長女夫婦に多く分けるような遺言を書いているときは有効になりやすいです。逆にそのような背景がない場合は無効に傾きます。

⑶ 生前贈与の存在。

例えば、三女に多く相続させるという遺言を書いていた場合に、生前他の兄弟にはたくさんの土地をあげていたという場合には、遺言は有効になりやすいです。逆に生前贈与をたくさん受けているのに、さらに貰っている場合などは、やや無効に傾く事情となります。

⑷ 遺言書そのものの内容の複雑さ

例えば、Aに遺産を全て相続させるという簡単な遺言の場合、上記の推測される動機などと合わさって、有効となりやすいです。逆に、遺言書が複雑な場合には、認知症が入っている親がそれを理解できていたか疑問が残るという事になり、無効になりやすいです。

以上のことを総合考慮して遺言の有効性を判断することになります。

認知症の場合の、遺言の無効についてのより詳しい解説はこちらです。

これから遺言書を作成しようとする場合や、遺言書が出てきたけれども、その当時は被相続人が認知症になっていた場合などは、是非弁護士に、できればカルテのコピーを取得してご相談に来てください。当事務所は遺言書が無効になるかどうかについて、無料で相談を受けています。↓お申込みはこちらから。

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2 遺言書の方式が間違っている遺言

自筆証書遺言の方式は、厳重にその要件が定められていて、これに反する遺言は無効となる事があります。自筆証書遺言の方式については、「遺言書の書き方と公正証書遺言」を参考にしてください。

良くある登記ができない遺言書としては、遺言書に記載されいてる土地の地番や、平米数などが実際の登記と異なっている場合です。例えば、遺言書でAの土地をあげると書いてあっても相続人が死ぬまでの間に、当該Aの土地は分筆されてAー1、A-2、A-3となっていて、平米数が異なるような場合です。

このような遺言書では、そのまま当該Aの土地を相続で登記することができません。そこで、登記をするために、遺言についての確認の裁判をすることがあります。

3 遺言書の重要部分の加除変更の箇所が間違っている遺言

遺言の加除変更の方式は、非常に細かく規定されています。具体的には、①その場所を支持し、②これを変更した旨を付記して③特にこれに署名し、かつ、④その変更場所に印を押さなければならないとされています(民法968条2項)。

加除変更の方式違反の箇所によっては、遺言全部が無効となる場合もあります。例えば、不適切な日付の変更によって抹消部分が判読できないため、遺言全部を無効としたものがあります(仙台地判昭50年2月27日)。しかし加除変更が僅少部分にとどまり付随的補足的地位を占めるにすぎず、その部分を除外しても遺言の主要な趣旨が反映されている場合には遺言の効力には影響ないとされています。なお、物件を特定するために加入された文言が方式違反であっても、もとの記載だけで物件の特定が可能な場合には、遺言書自体の無効はきたさないとした判例があります(新潟地裁長岡支部判例昭和61年7月17日)。

4 共同遺言の場合

二人以上の者が同一の証書で遺言することを共同遺言と言います。例えば夫婦が同一の遺言書で遺贈をするようなものです。このような遺言は、自由に撤回できなくなったりするおそれや、遺言の効力の発生時期などについて、複雑な権利関係を生じさせる恐れがあることから、民法上禁止されています(民法975条・同982条)。そのため、このような遺言は無効とされています。

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