はじめに
自筆証書遺言は、相続の際に自身の意思を明確に伝えるための重要な手段です。
遺言書を作成する際に注意すべきポイントを押さえ、適切な方式で作成することで、遺言の有効性を確保できます。
本記事では、沖縄の弁護士が自筆証書遺言の基本的な書き方や注意点について詳しく解説します。
目次
1 自筆証書遺言の基本的な方式
自筆証書遺言は、最も簡単に作成できる遺言書です。
遺言を考えている方々にとって、自分で作成できる点が特徴です。
しかし、遺言書が有効であるためには、以下の要件を守ることが大切です。
- 遺言の全文を自筆で書くこと
- 日付を記載すること
- 自分の氏名を記入すること
- 最後に押印をすること
これらを守らないと、遺言書が無効となる可能性があります。
自筆証書遺言を作成する際は、注意深く進めましょう。
もし体調が悪くて自筆が困難な場合は、沖縄の信頼できる弁護士に相談し、代替方法(公正証書遺言や危急時遺言)の検討をおすすめします。
関連記事:公正証書遺言の書き方とひな型|沖縄の相続に強い弁護士が解説
2 自筆証書遺言作成時の注意点
(1)遺言者が「全文」を自書すること
自筆証書遺言は、遺言者が自筆で書かなければなりません。
自筆で書かれた遺言者の筆跡が確認できることが重要です。
パソコンやタイプライターで記載した遺言書は無効となる可能性が高いため、専門家と相談しながら作成を進めることが推奨されます。
自筆かどうか争われた場合は、筆跡鑑定を基本として、遺言者の自筆能力、遺言の内容、その他の事情など諸般の事情を考慮して判断されます。
遺言が被相続人自らが記載していないと思われる場合には、弁護士が私的鑑定を頼んで調査を依頼し、その内容によっては、詳しい鑑定を依頼したうえで、裁判所に遺言無効の訴えを起こすこともあります。
その上で、裁判所が依頼した鑑定人が筆跡を鑑定することもあります。
手が震えて字が書けない遺言者の運筆を他人が補助して作成した遺言書は、自筆とみなして有効とされた判例があります(大判昭和6年7月10日)。
遺言書の一部が自筆で、他の部分を他人が記載した場合、自筆の部分まで無効となるかどうかについては争いがありますが、判例では、加除部分のみを無効としたものがあります(大阪高裁判例昭和44年11月17日)。
この事例では、他人が加除した部分が遺言書の中で僅少な部分にとどまり、付随的なものであったため、その部分を除外しても遺言の主要な趣旨は表現されていると判断されたことが影響しています。
ア)相続法改正による財産目録の作成方法
相続法改正により、平成31年1月13日からは、財産目録についてはパソコンで作成することが認められています。
これにより、財産目録は自筆でなくても作成できるようになり、遺言書作成の手間が軽減されましたが、遺言本文については依然として自筆が求められています。
また、以下の点に注意する必要があります。
- 自筆証書の本体とは別個に、財産目録にも毎葉ごと(1枚ごと)に署名押印が必要とされています。
- 財産目録が裏表に印字されている場合にはその両方に署名押印が必要です。
- 自分でパソコンなどで作成する場合に限らず、通帳のコピーや不動産の登記簿のコピーなどに署名押印することで財産目録とすることも認められています。
- 財産目録は、自筆証書遺言の本文と別の用紙に記載する必要があり、同じ用紙に記載される形式は認められていません。
詳しくは、法務省の公式ページをご確認ください。
【外部リンク】法務省/自筆証書遺言に関するルールが変わります。
【外部リンク】法務省/自筆証書遺言に関する見直し
(2)遺言書の日付について
日付は通常、年・月・日で記載されます。遺言書に日付を記載する目的は、遺言の成立日を明確にし、その遺言が有効かどうか、また他の遺言との前後関係や撤回の有無を確認するためです(民法1023条1項)。
日付が正確に記載されていない場合、遺言書の有効性に疑問が生じることがあります。
遺言成立の日が確定できれば良いため、例えば「私の還暦の日」や「銀婚式の日」など、特定の記念日を日付として記載することも可能です。
一方で、「何年何月吉日」といった、具体的な日付が不明な場合、遺言は無効となりますので、注意が必要です。
また、故意に遡って日付を記載した場合、例えば遺言より前の日付を記載することは、日付の記載として無効とされます。
しかし、遺言者が誤って記載した場合は、錯誤による単なる誤記載と見なされ、真実の日付が明確に確認できれば、その遺言は有効とされることがあります(最判昭52年11月21日)。
さらに、遺言書を封筒に入れて日付を記載し、封印した場合も有効とされています。この方法により、遺言が無効とされるリスクを減らすことができます。
(3)遺言者の氏名
遺言書には遺言者の氏名も自筆で記入しなければなりません。
通称名や芸名、ペンネームを使用することも可能ですが、遺言者が特定できるように記載することが求められます。
(4)押印について
押印のない遺言書は無効とされています。
しかし、遺言者の真意が他の証拠で確認できる場合、押印がない遺言書でも有効とされることがあります。
(5)遺言書を封筒に入れることの重要性
遺言書を封筒に入れることは必須ではありませんが、遺言書を封筒に入れて保管することで、紛失や書き換えを防ぐことができます。
封筒には「遺言書在中」などと書き、日付も記載しておくことをお勧めします。
3 遺言書ひな形・遺言書の書式
(1)自筆証遺言書の記載例
自筆証書遺言のひな形を示しますが、事案によってはそのまま使用できない場合があります。
不明点がある場合には、弁護士等に相談し、適切な内容を盛り込むことが重要です。
(2)自筆証遺言書の加除訂正(例)
(3)自筆証書遺言 物件目録別紙バージョン
4 自筆証書遺言のメリットとデメリット
自筆証書遺言の最大のメリットは、費用をかけずに自分一人で作成できる点にあります。公正証書遺言のように公証人を介さず、自宅で思い立ったときに自由に作成できるため、手軽に始められる遺言方法といえます。
- 作成費用がかからない(公証人報酬など不要)
- 思い立ったときにすぐ作成・修正が可能
- 他人に内容を知られずに済む(秘密性が高い)
一方で、自筆証書遺言にはいくつかの重要な注意点やリスクも存在します。
形式面での不備や保管方法によっては、せっかく作成した遺言が無効になってしまう可能性があります。
- 書式や署名押印などの形式不備により無効となるおそれがある
- 紛失、隠匿、偽造、改ざんなどのリスクがある
- 遺言者が認知症などで判断能力に問題があった場合、無効とされる可能性もある
- 遺言者の死後、家庭裁判所の「検認」が必要
これらのリスクを回避するためには、弁護士に相談しながら作成することが非常に重要です。
形式や文言に問題がないかを確認し、将来の相続トラブルを未然に防ぐためにも、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
なお、近年では法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用することで、保管場所に悩む必要もなくなり、偽造や紛失といったリスクも軽減できるようになっています。
詳しくは、法務省の公式ページをご確認ください。
【外部リンク】法務省/自筆証書遺言書保管制度
沖縄で相続問題を解決したい方へ
自筆証書遺言は、非常に簡便でコストを抑えて作成できる遺言の方法です。
しかし、法的に有効であるためには、細かな手続きや書き方に注意が必要です。
遺言書の作成にあたり、自分の意思を確実に伝えるためには、沖縄の弁護士と連携することが非常に重要です。
遺言書の作成が不安な方や、特に相続に関して複雑な状況がある場合は、弁護士のアドバイスを受けながら進めることを強くお勧めします。
那覇市・沖縄市・うるま市に事務所を構える弁護士法人ニライ総合法律事務所では、沖縄地域に根ざした法律サービスを提供し、相続や遺言に関するご相談を数多く取り扱っております。
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