1 そもそも軍用地とは

軍用地とは、政府が米軍または自衛隊に貸している土地を言います。
国が私人から土地を借りている形になっており、軍用地を所持しているだけで、毎年軍用地料が日本政府(防衛局)から支払われます。
だいたい、7月末頃に支払われます。通常、軍用地を所持した人は軍用地地主会に入会することが多く、防衛局から軍用地地主会に一度振り込まれた軍用地が、地主会会費を引かれて、地主に振り込まれます。

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2 不動産以外のめぼしい財産がすくない場合、遺産分割協議は難しくなる

土地以外の相続財産が少ない場合、遺産分割協議がスムーズにいかない。
遺産の中に土地が含まれていた場合、特に軍用地が含まれていた場合に、スムーズな遺産分割が難しくなることが多々あります。
特に相続人が複数いて、一筆の土地以外にめぼしい相続財産がない場合に、その傾向は顕著になります。
以下では、相続財産に軍用地が含まれている場合の分割方法について述べます。

3 一般に土地の遺産分割方法は4つの方法がある

一般的な土地の遺産分割方法としては、「現物分割」「代償分割」「換価分割」「共有分割」の4つの方法があります。

現物分割

「現物分割」とは、相続した一筆の土地を分筆して、それぞれの土地をそれぞれの相続人が所有する方法です。
この方法によると、被相続人の土地を子孫(相続人)に承継することができること、後述の代償分割のような土地を相続する相続人に資力を要しないことがメリットになる一方、分筆に手間や時間がかかること、分筆によって土地が狭くなるため、建物の建築や増築が制限される可能性があること、そのため売却したい場合に買い手がつきにくくなるなどのデメリットがあります。

現物分割イメージ

代償分割

「代償分割」とは、ある特定の遺産(この場合は土地)を相続人の一人が相続するかわりに、他の相続人に相当額の現金を渡す方法です。
この方法だと、先祖代々の土地をそのままの形で次世代に引き継げるというメリットがありますが、土地を相続する相続人に資力がないと実現が困難であり、また、土地の評価について相続人間で争いがおこる可能性があるというデメリットがあります。

代償分割イメージ

換価分割

「換価分割」とは、土地を売って、代金を相続人で分ける方法です。
相続人に資力がなくても可能である、土地の評価額について争いがおこらずに、遺産を平等に分けることができるというメリットがある一方で、被相続人の大事な土地を次世代に残すことができなくなる、土地を売却する手間や時間がかかる、そもそも売れない可能性もある、というデメリットもあります。

換価分割イメージ

共有分割

「共有分割」とは、一筆の土地を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。
現物分割の文筆の手間も、換価分割のように売却の手間もなく、代償分割のように相続する相続人に資力がなくても可能です。
ただし、不動産を共有名義にすると、売却をするのに全員の同意が必要になる等の不便もあります。
また、子の代、孫の代になると、共有者が多くなり、権利関係が複雑になるため、あまり、お勧めできません。

共有分割イメージ

4 軍用地の分け方はどうした方がよい?

軍用地は、毎年一定額の軍用地料を受領できるというメリットがありますが、換価分割して現金に換えてしまうと、当然のことながら、以後の軍用地料は受領できなくなります。
「換価分割」をするともったいないと感じる相続人も多いと思います。
軍用地を相続人のうちの一人が相続して、ほかの相続人に相続分相当額の現金を渡す代償分割の方法、そもそも軍用地を相続する相続人にかなりの資力がないと成立しません。
軍用地の市場価額は、立地によっても異なりますが、だいたい年間借地料の40倍から60倍と言われています。
そうなると、軍用地の評価は高くなり、軍用地を相続する相続人がほかの相続人に渡す代償金の額も自然と大きくなることから、この方法での相続の実現可能性が低くなることがあります。また、軍用地の評価・代償金の額をめぐっての争いも深刻になり、なかなか進まない場合が多いです。

最適な軍用地の分け方は?

5 相続人の名義のままにしておくデメリット

このような状況から、代償金を支払う資力がある相続人がいない場合、遺産分割協議を後回しにして、軍用地を被相続人の名義のままにしておき、地主会に相続人代表者(借地料受領者)を届け出て、借地料受領者が毎年他の相続人に借地料を配分する方法をとっている場合もあります。
しかし、いつまでもこの方法で借地料を受領できるかどうかは不透明です。また、借地料の分配過程でトラブルがあったり、借地料受領者が使い込んでしまう可能性もあります。

また、令和6年(2024年)4月から改正不動産登記法が施行されますので、被相続人の死亡後3年以上相続登記の申請を行わないと10万円以下の過料の対象になります。

6 軍用地の共有分割はあり?

軍用地を相続人全員の共有名義で不動産登記をすれば、改正不動産登記法による過料の対象からは免れますが、共有軍用地の借地料については、地主会に届け出た相続人代表者に全額振り込まれる形になりますので、依然として分配過程でのトラブルの可能性は残ります。
また、相続人の代はそれでもよくても、子の代、さらに孫の代になると、共有者の数が多くなり、分配のトラブルが大きくなる可能性もあります。
また、共有者のうちの一人がまとまった金員が必要となっても共有者全員の同意なしには売却できません。
以上のことから、共有のまま相続することはあまりお勧めできません。

7 一定の広さ(借地料)以上の軍用地であれば、分筆して現物分割がおすすめ

軍用地を相続人間で分筆して、分筆登記をし、それぞれの借地料をそれぞれに受け取れるようにする方がお勧めです。

一般の土地の場合の分筆は、上述のとおり土地の形状がかわったり、分筆によって土地が狭くなり建物の建築や増築が制限され、そのため売却したい場合に買い手がつきにくくなるなどのデメリットがありますが、軍用地は、そもそも、所有者が土地を利用することができるものではなく、安定的な賃借料を得るための手段として所有しているものなので、土地が狭くなることによるメリットはほとんどありません。

8 相続開始後分筆前の借地料は誰のものか

最高裁判例(最高裁判所平成17年9月8日)によると、相続開始後、遺産分割前までの間に生じた果実は、遺産(相続財産)とは別個の財産であり、共同相続人が相続分に応じて個別に取得する財産であるとされています。
すなわち、遺産分割までに支払われた(あるいは、供託された)賃料については、相続人が相続分に応じて取得することになります。
しかし、相続人全員が、遺産分割の対象とすることに合意している場合には,遺産分割の対象とすることは可能です。例えば、相続開始後、遺産分割協議までの間に、100万円の賃借料が払われていた(あるいは、法務局に供託されていた)場合、相続人全員が合意すれば、遺産にこの100万円を上乗せしたものを分割の対象とすることは、可能です。

9 軍用地が遺産に含まれるときに弁護士に頼むメリット

実際の相続には、特別受益や寄与分、特別寄与料などの有無が争われるケースも多いです。
また、借地料が比較的少なかったり、軍用地の単独相続を希望する相続人に資力があったりする場合現物分割ではなく代償分割を選択する場合もありますが、その場合の軍用地の評価などに争いがあることがあります。
弁護士に委任いただくことによって、どのような事情が自分に有利に働くか、どのような事情が不利に働くかの的確な判断ができ、有利に遺産分割協議(遺産分割調停)を進めていくことが可能です。

また、相続人間の感情的な対立があってなかなか遺産分割協議が前に進まないといったこともあります。
弁護士の経験則上、この感情的な対立は、他人同士の紛争よりもむしろ、夫婦、兄弟のような身近な者同士の紛争の方が厄介です。
このような場合にも、弁護士に委任することによって、おおよそ遺産分割方法の帰趨を左右しないような類の相手方の感情的な主張をブロックし、精神的な負担を軽減することが可能です。
加えて、遺産相続の経験豊富な弁護士であれば、遺産分割の協議の過程の中で、負債の処理や祭祀承継(トート―メ―)に必要な費用について、未分割の軍用地料を活用することなどの提案も可能です。
もっとも、相続税の申告、分筆登記、相続登記などは弁護士にはできません。
ただし、弁護士法人ニライ総合法律事務所では、提携する税理士、司法書士、土地家屋調査士がおりますので、お客様に御紹介することもできます。その際、お客様の了解を得て、弁護士の方から、予め、御紹介する税理士、司法書士、土地家屋調査士にお客様の希望を伝え、費用の見積もりをとることも可能です。弁護士法人ニライ総合法律事務所は、軍用地の遺産分割の解決事例も豊富にあります。

最適な軍用地の分け方は?

遺産分割調停の中で、軍用地の分筆を決定し、土地家屋調査士、司法書士を御紹介して、分筆登記・相続登記を完了させたり、法務局に供託された借地料の払渡請求も代行し、借地料で相続人の負債や遺産分割前の固定資産税の支払いをしたり、分筆費用や登記費用に充てたケースもあります。
相続・特に、相続財産に軍用地が含まれている相続は、ぜひ、弁護士法人ニライ総合法律事務所に御相談ください。

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