兄弟間の相続争いはどういう場合にトラブルになりやすいか

兄弟姉妹間での相続トラブルは、当事者にとって心身の負担となる深刻な問題です。親が亡くなり、遺産相続の手続きが進まない状況では、一方の身勝手な主張によってもめ事が生じ、解決が遠のいてしまうことも少なくありません。

例えば、兄弟姉妹間で遺産分割が話し合いの場で行われるはずが、1人が勝手に一部の財産を私物化し、他の兄弟姉妹には相続分を渡さないと主張するケースがあります。このような場合でも、相続分は法律に定められており、相続人たる兄弟全員には、遺産の一定割合が与えられるべきです。

とはいえ、実際に相続トラブルに巻き込まれてしまうと、精神的に負担が大きく、心身ともに疲弊してしまいます。

この記事では、紛争になってしまっても早期に解決するために、兄弟姉妹間の相続でよくあるトラブルの事例やその対処法について、解説します。

兄弟間の相続でよくあるトラブルと対応方法

目次

1、兄弟間で起こりがちな相続争いの例

(1)相続の対象となるもの

(2)兄弟間で起こりがちな相続争い

2、1人の相続人がすべての財産を取得することは基本的にない!遺留分とは?

(1)遺言がない場合には相続人全員の協議が必要

(2)遺留分とは?

(3)遺留分が認められる人

(4)遺留分が認められない人

3、相続人の1人に「すべての財産を残す」という遺言書が残されていた場合

(1)遺留分侵害額請求

(2)注意点

4、兄弟間の相続争いを弁護士に相談するメリット7つ

(1)不当な主張への対処

(2)正当な遺産の範囲の画定

(3)遺産分割トラブルへの対処

(4)遺産分割協議の交渉の負担軽減

(5)遺留分の適切な主張

(6)遺留分侵害額請求の負担の軽減

(7)調停、審判、訴訟への対応

5、まとめ

 

1、兄弟間で起こりがちな相続争いの例

(1)相続の対象となるもの

民法は、「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」(民法896条)という原則を定めます。したがって、原則として、被相続人の物権(家の所有権や地上権等)や債権(売買代金請求権や損害賠償請求権等)、債務(借金)などが相続の対象となります。

これに対して、一見すると相続の対象になりそうでも、生命保険金請求権(最判昭和40年2月2日)や死亡退職金・遺族給付金(最判昭和55年11月27日、民集34-6-815)、香典・弔慰金、祭祀財産(民法897条1項・2項)・遺骨(最判平成元年7月18日)は相続の対象になりません。

(2)兄弟間で起こりがちな相続争い

兄弟間の相続問題がトラブルに発展してしまう背景については、こちらで詳しく解説していますので、ご覧ください。

⑶ 兄弟間の相続持分

兄弟間の相続分についてはこちらをご覧ください。

ア 不公平な相続分配の主張

相続財産の分配において、1人が遺産を多くもらいたい等不公平な主張をすることがあります。特に沖縄だと、長男優遇の文化があり、長男が遺産は全て自分のものだと主張するケースも珍しくありません。

イ 遺言書の有効性の争い

もし故人が遺言書を残していた場合、その遺言書の有効性を巡って兄弟間で争いが生じることがあります。特に、遺産をすべて誰か1人に相続させるという内容の遺言が残っていた場合、遺言書の有効性をめぐって争いになることがあります。

ウ 財産の隠匿や不正取得の疑い

兄弟の中で、1人が相続財産を隠匿したり、不正手段で財産を取得したと疑われる場合、他の兄弟がその行為に対して異議を唱えることがあります。

2、1人の相続人がすべての財産を取得することは基本的にない!遺留分とは?

(1)遺言がない場合には相続人全員の協議が必要

遺言がない場合には、遺産分割協議を行う必要があります。遺産分割協議は、兄弟で集まって自分たちでどのように遺産を分けるか話し合うことも、裁判所の手続を利用して行うこともできます。裁判所の手続を利用して話し合いを行うのが、遺産分割調停です。兄弟のうちだれか1人が多く遺産を取得することを主張しても、全員の合意がなければ、勝手に遺産を分配することはできません。

(2)遺留分とは?

遺留分とは、遺贈等によっても奪われない相続権のことです(民1042条1項参照)。遺言や生前贈与によって、他の人に遺産が多く分配された結果、相続できる遺産が遺留分を下回った人は、遺留分侵害額請求(民法1046条1項)により、遺留分との差額を他の相続人や贈与を受遺者・受贈者に請求することができます。具体的な、遺留分については、民法1042条以下に規定がされています。

(3)遺留分が認められる人

遺留分は、被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に認められています(1042条1項)。具体的には、被相続人の配偶者・子・直系尊属(両親や祖父母等)には、遺留分が認められています。また、胎児や代襲相続にも遺留分は認められます。

(4)遺留分が認められない人

民法1042条1項に明記されているように、被相続人の兄弟姉妹には、遺留分が認められません。また、相続欠格・廃除・相続放棄があると、その者には、相続権がなくなるので、遺留分もなくなります。

3、相続人の1人に「すべての財産を残す」という遺言書が残されていた場合

(1)遺留分侵害額請求

有効な遺言がある場合、原則として遺言の内容通りに遺産が分配されます。しかし、上でも述べたように、一定の相続人には、遺言によっても奪うことのできない相続分である遺留分が存在します。誰か1人に遺産をすべて残すという内容の遺言がある場合でも、遺留分侵害額請求(民法1046条1項)を行い、遺留分については金銭の形で支払ってもらうことができます。

(2)注意点

遺留分は、上記の侵害額請求を行うことで認められる権利であり、遺留分侵害額請求の意思表示が必要です。そして、民法1048条は、「遺留分侵害額の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間行使しないときは、時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする。」と遺留分侵害額請求を行うことができる期間を制限しており、この期間内に、請求を行わなかった場合、請求ができなくなってしまいます。

4、兄弟間の相続争いを弁護士に相談するメリット7つ

(1)不当な主張への対処

相続争いでは、時に不当な主張や虚偽の主張が行われることがあります。弁護士は法的な知識と経験を持っており、不当な主張に対して的確に対処することができます。適切な証拠の収集や法解釈、事実の主張・立証を通じて、不当な主張を排除するための支援が可能です。

(2)正当な遺産の範囲の画定

上述したように何が相続対象財産で、何がそうでないのか、判断に困る場合があります。また、被相続人と疎遠だった場合、被相続人の財産をきちんと把握できておらず、他の相続人に遺産を隠匿されてしまう恐れもあります。弁護士であれば、弁護士会照会という仕組みを用いたり、裁判所の手続を通じて被相続人の財産を調査することが可能です。

(3)遺産分割トラブルへの対処

公平な分割を求めるためには、法的な知識と専門的なアドバイスが必要です。弁護士が交渉に入ることで、相手に自分の主張が無理筋であると理解させることにつながります。また、依頼者の方の主張が調停や裁判になった際に、認められる可能性がどの程度あるかを弁護士が判断することで、その主張をどの程度強く行うべきかを判断することができます。

(4)遺産分割協議の交渉の負担軽減

兄弟間の相続争いを円満に解決するためには、遺産分割の協議が重要です。しかし、感情的な争いが絡み合っている場合、協議が難航することがあります。感情的な争いが絡み合った協議をご自身で行うことは、非常に大きな精神的なストレスになります。このような精神的負荷を軽減することも、弁護士に依頼する大きなメリットです。

(5)遺留分の適切な主張

遺留分については、民法1042条に定められていますが、その規定の仕方が複雑で、また、特別受益等も関わってくるため、遺留分の計算を正確に行うことは、困難な場合が多くあります。弁護士に依頼することで、誤った主張により損をしてしまったり、紛争が激化・長期化してしまうことを避けることができます。

(6)遺留分侵害額請求の負担の軽減

遺留分が侵害された場合、一定の相続人は侵害額の請求をすることができます。しかし、その証明や請求手続きは複雑な場合があります。また、当事者間の感情的な争いにより疲弊してしまうことも非常に多いです。弁護士は相続人の代理人として、遺留分の侵害額を適切に評価し、適切な請求手続きを行うことができます。

(7)調停、審判、訴訟への対応

兄弟間の相続争いが解決しない場合、調停、審判、または訴訟といった法的手続きが必要になることがあります。弁護士はこれらの手続きに精通しており、相続人の権利を最大限に守るために必要な法的措置を取ることができます。

5、まとめ

兄弟間の相続争いは、当事者にとって大きな負担になります。兄弟の1人が身勝手な主張をしている場合はなおさらです。また、ご自身では、難しい法的手続きや主張を行わなければならない場合も多々あります。弁護士に相談することで、ご自身の権利を守りつつ、負担を軽減することが可能です。

弁護士法人ニライ総合法律事務所は、沖縄で開業10年以上になります。開業以来の民事刑事の取り扱い件数は1600件以上にのぼります。沖縄県で多数の相続事件を取り扱っていく中で、相続での取得額アップの成功事例を積み重ねてきました。事例紹介、お客様の声をご覧になって、他の事務所との経験値を比べてみてください。【お客様の声・相続解決

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