1 失踪宣告とは

連絡が取れない人が、失踪してから7年間生死不明の状態となっているとき(普通失踪)は家庭裁判所に申し立てて、失踪宣告の審判をしてもらうことができます(民法30条1項、家事事件手続法39条、別表第一 五十六)。また、連絡が取れない人が戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇していたとき(危難失踪)で、その危難が去った後その生死が1年間明らかでないときも、同様に、家庭裁判所に申し立てて,失踪宣告の審判をしてもらうことができます(同条2項、家事事件手続法39条、別表第一 五十六項)。

失踪宣告がなされると、その人は、失踪から7年を経過した時点(危難失踪の場合は,危難が去ったとき)において、死亡したものとみなされます。。

2 失踪宣告の審判の申立の仕方

(1) 申立人

申立人は、不在者の利害関係人となっています(民法30条)。

利害関係人とは、不在者の配偶者、相続人にあたる者、財産管理人、受遺者など失踪宣告を求めるについて法律上の利害関係を有する者をいいます。

(2)申立先

不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所となっています(家事事件手続法148条1項)

(3)申立に必要な費用

  • 収入印紙800円分
  • 連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)
  • 官報公告料4298円(失踪に関する届出の催告2725円及び失踪宣告1573円の合計額。裁判所の指示があってから納めてください。)

(4)申立てに必要な書類

① 申立書

② 標準的な申立添付書類

  • 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 不在者の戸籍附票
  • 失踪を証する資料
  • 申立人の利害関係を証する資料(親族関係であれば戸籍謄本(全部事項証明書))

※ もし,申立前に入手が不可能な戸籍等がある場合は,その戸籍等は,申立後に追加提出することでも差し支えありません。

なお、申立書の書式及び記載例は、以下のとおりです。

書式記載例

3 失踪宣告の審判の審理

失踪宣告は、不在者を死亡とみなす重要な審判であることから、特に慎重さが求められます。

家庭裁判所は、公告ならびに一定の期間経過後でなければ、家庭裁判所は失踪の宣告をすることができません(家事事件手続法第148条第3項。)よって、家庭裁判所は、事前調査をし、その後、家庭裁判所が「失踪に関する届出の催告(公示催告)」と呼ばれる公告を行います。

 

4 失踪宣告の審判の効果

失踪宣告とは,生死不明の者に対して,法律上死亡したものとみなす効果を生じさせる制度です。

失踪宣告がなされると、その人は、失踪から7年を経過した時点(危難失踪の場合は,危難が去ったとき)において、死亡したものとみなされ、不在者(失踪者)についての相続が開始されます。また,仮に不在者が婚姻をしていれば,死亡とみなされることにより,婚姻関係が解消します。しかし、現実に不在者が死亡したものではないから、不在者がどこかで生きていた場合に、その人が契約を締結すること等は可能です。

5 失踪宣告がなされた場合の遺産分割協議

そして、不在者が死亡したとみなされますから、不在者以外の相続人だけで、遺産分割協議ができます。ただし、不在者が死亡したとみなされるときが相続開始後であり、かつ、不在者に相続人がいた場合には、不在者の相続人が遺産分割協議に参加することになります。また、不在者が死亡したとみなされるときが、相続開始前であっても、代襲相続(民法887条)が発生する場合には、不在者の相続人が遺産分割協議に参加することになります。