生前贈与と預貯金などの金銭は、相続分にどう反映されるか。

金銭を生前贈与された場合に、よく相続トラブルになっている事を目にします。生前贈与された金銭は遺産分割調停や審判ではどこまで相続持ち分に影響するのでしょうか。相続の際に預貯金などの金銭が生前贈与された場合について、説明します。

第1 預貯金などの生前贈与が持ち戻し免除となる場合。

預貯金や金銭が、生前贈与されている場合に、これが「生計の資本」として特別受益に当たるかは、「贈与の金額」「贈与の趣旨」から、相続分の前渡しとして評価できるかどうかでかわってきます。

例えば、被相続人の資力にも関係しますが、数万~数十万程度のお金ですぐに使ってしまうようなものは、生計の資本としての贈与とは言えず、相続の具体的持分に影響を与えないことが多いです。

少額の金銭の贈与でも長期間にわたって交付され総額が高くなっているような場合には、一定の額以下は持ち戻しの対象としないけれども、一定額以上を超えている場合には、これを持ち戻しの対象とすると考える場合もあります(10万円以上を特別受益とした例として東京家審・平成21年1月30日)。

また、お祝いの類であるとか、病弱の子に対する金銭的な援助は、親としての扶養義務の範囲内の履行であり、特別受益とは考えられていません。

第2 借金の肩代わり

親が子どもの借金のかたがわりをした場合に、これが特別受益として具体的な相続持ち分に影響を与えるか問題となります。

債務の肩代わりについては、生前贈与と同じであるとも考えられそうですが、肩代わりした債務に対して親が求償権を放棄しているかどうかも特別受益となるかどうかの判断に影響を与えます。大体の親は求償権を放棄している(借金を肩代わりしている時にあとで返してもらおうと思っていない)ケースが多いかと思われ、特別受益に当たる可能性が高いと言えます。

第3 まとめ

生前贈与のうち金銭の贈与や借金の肩代わりが、特別受益になるかどうかは、相続持ち分に影響を与えますが、どんな金銭の贈与が特別受益になるかを見分けることは通常非常に難しいです。是非一度、相続に専門的な知識を有する経験豊富な弁護士に相談してください。