目次

1 寄与分とは?

寄与分とは、遺産の維持・増加に貢献した「相続人」について、その貢献度に応じて他の相続人よりも多くの具体的相続分を認めることで、相続人間の公平を図る制度です(民法904条の2第1項)。

民法第904条の2
共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始時に有していた財産の価額から、共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする。

具体的には、相続人のうち、被相続人の介護をした人生前の稼業を手伝った人被相続人にまとまった金銭を給付した人などが対象となります。

2 寄与分が認められる要件

では、どのような場合に寄与分が認められるのでしょうか。主な要件を見ていきます。

(1) 相続人自身の寄与があること

寄与分はあくまでも相続人の相続分を修正する制度であるため、民法上、寄与分を主張できるのは相続人に限られます
そのため、相続人の配偶者や子どもは、原則として直接寄与分を主張することはできません。
もっとも、代襲相続人は、被代襲者の寄与を主張することができるとされています(熊本家裁玉名支部平成3年5月31日審判)。

相続人の配偶者及び子は、寄与分の主張ができない

また、相続法改正により、相続人以外の親族も「特別寄与料」を請求できる制度が導入され、相続人以外の親族でも、6か月以内であれば「特別の寄与」として申し立てることが可能となりました。
関連記事:「特別の寄与」について弁護士が解説

具体例

  1. 相続人の長男が、被相続人の会社で働き、財産の維持形成に貢献した
  2. 相続人の配偶者が、被相続人とともに農業に無報酬で従事した
  3. 相続人の配偶者が、被相続人と同居し、自宅で重度の介護を行った

(2) 「特別な寄与」であること

寄与分が認められるには、「通常期待される範囲を超える特別の寄与」が必要です。
家庭局「改正民法及び家事審判法の解釈運用について」(家月33巻4号2頁)は、次のように述べています。

「被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度の貢献は相続分事態において評価されているとみることができ、特にこれを相続分の修正要素として扱う必要はないこと、また、通常期待されるような程度の貢献をも寄与分と評価し相続分の修正要素とみることは「相続分」をきわめて可変的なものにすることになり権利関係の安定を著しく害するおそれがあることなどから、通常期待されるような貢献は寄与分として評価しない」

寄与分とならない例

  • 民法752条:夫婦間の協力扶助義務に基づく行為
  • 民法877条1項:親族間の扶養義務・互助義務の範囲内の行為

(3) 被相続人の遺産が維持または増加したこと

  • 維持:相続人の行為によって財産の減少や借金の増加が防止された
  • 増加:相続人の行為がなければ得られなかった財産の増加や債務の減少があった

(4) 寄与分は簡単には認められない

例えば、要介護度が低い被相続人を介護しただけでは認められないことがあります。
また、稼業の手伝いについても、一定以上の継続的・実質的な貢献を証明する必要があり、単に当てはまる事実があるからといって、寄与分がすぐに認められるわけではないことに注意が必要です。

そもそも、主張が法的に妥当かどうか、その主張を裏付ける証拠があるかどうかは、実務経験のある弁護士でないと判断が難しいことが多いです。

いたずらに認められにくい寄与分を主張し続けると、遺産分割調停が長期化する原因にもなります(2年以上かかる例もあります)。
弁護士法人ニライ総合法律事務所の寄与分獲得の事例についてはこちら

3 寄与分の計算の仕方

例えば、親が亡くなった場合に、「自分が親の面倒を見た」「あのとき助けてあげた」などと、相続人それぞれが寄与を主張することがよくあります。
このとき、何をもって「寄与があった」と判断するか、またどのようにその寄与分を算定するかが重要になります。

民法上、寄与があったとされる典型例は以下のとおりです。

  • 1.被相続人の事業に対する労務の提供
  • 2.財産上の給付
  • 3.被相続人の療養看護

これらに該当し、さらに以下のような場合も対象となることがあります。

  • 4.態様を問わず、被相続人の財産の維持・増加について、夫婦の協力義務や親族の扶養義務の範囲を超える特別な寄与があったと認められる場合

繰り返しになりますが、寄与分が認められるのは「特別な寄与」がある場合に限られます。
なお、寄与分については相続人同士の話し合いで決めることもできますが、意見が対立した場合は家庭裁判所による審判で寄与分が認定されることになります。

4 介護・療養看護型の寄与分

(1) 療養看護型の評価方法

療養看護による寄与分は、以下のような計算方法で算定されるのが一般的です。

療養看護報酬(日当) × 看護日数 × 裁量割合

実務では、介護保険サービスの報酬基準(地域やサービス内容によって異なる)などを参考にして、寄与分の金額が判断されます。

(2) 裁量割合

療養看護の評価における裁量割合は、おおよそ 0.5~0.8 の範囲で調整され、0.7前後が平均的とされています(遺産分割・遺留分の実務)。

(3) 看護者が複数いる場合

複数の相続人等が看護にあたっていた場合、それぞれが担った介護の内容や時間に応じて、負担割合を考慮して寄与分を配分する方法が用いられます。

(4) 具体的な介護報酬額の目安

介護保険制度に基づく報酬額を用いる例

  • 要介護2・3:日当 5,840円 × 0.7(裁量割合)= 約4,088円
  • 要介護4:日当 6,670円 × 0.7 = 約4,669円
  • 要介護5:日当 7,500円 × 0.7 = 約5,250円
  • 入院付き添い:日当 6,500円(「赤い本」2015年 p.15)

なお、要支援1・2や要介護1では、寄与分が認められないケースが一般的です。

5 稼業を手伝った場合の寄与分

(=被相続人の事業への労務提供)
農業や商店経営など、家業に家族が協力して従事していたような場合は、稼業型の寄与が問題となります。

このタイプの寄与分は、評価が困難であることが多いため、

  • 従事の時期・期間
  • 作業の内容や密度
  • 相続財産の額

などあらゆる事情を総合的に考慮し、裁判所の裁量で寄与分が定められる傾向にあります。
場合によっては、労働の対価相当額(給与換算)を基に評価されることもあります。
(例:東京高裁決定 昭和54年2月6日・判時931号68頁)
くの事例では、寄与の程度に応じて1割から5割程度の範囲内で寄与分が認定されます。

介護

6 財産上の給付による寄与分

被相続人に対して、相続人が金銭などの財産的利益を与えた場合にも、寄与分が認められることがあります。

典型例としては、共働きの夫婦のケースが挙げられます。
たとえば、夫名義で自宅を購入したものの、その費用の一部に妻の収入が充てられていた場合。
仮に妻の収入が生活費に消えたとしても、夫がその分を全額財産形成に回せたなら、妻の貢献も評価されます。
→ このような場合には、収入比や貢献割合に応じて、財産に対する寄与分が認定される可能性があります。

7 寄与分申立てを弁護士に依頼するメリット

寄与分は、遺産分割調停の場で当事者間の争点になることが多くあります。
しかし、寄与分の存在やその金額について、他の相続人が同意しないケースが大半です。
このような場合、家庭裁判所に寄与分の審判を申し立てる必要がありますが、

  • 客観的な証拠の収集
  • 貢献内容の法的評価
  • 金額の妥当性の計算

など、一般の方が適切に行うのは困難です。
また、根拠の薄い主張を続けると、遺産分割の協議や調停が長期化・複雑化するおそれもあります。
寄与分の申立の必要性を認めたら、遺産分割の専門家である弁護士に相談することを強くお勧めします。

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