
遺言書に「長男にすべての財産を相続させる」と書かれていた場合や、特定の相続人だけが多額の生前贈与を受けていた場合、ほかの相続人は遺留分侵害額を請求できる可能性があります。
もっとも、請求できる金額は、相続財産に遺留分割合を掛けるだけでは算定できません。生前贈与、特別受益、借金なども考慮する必要があります。
この記事では、遺留分侵害額の基本的な計算方法と、計算において問題になりやすいポイントを相続弁護士が解説します。
遺留分制度や請求手続の全体像については、「遺留分の請求について|沖縄の相続に強い弁護士がわかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
1 遺留分侵害額の基本的な計算方法
遺留分侵害額は、次の手順で計算します。
- 遺留分算定の基礎となる財産を確認する
- 相続人ごとの遺留分割合を確認する
- 各相続人の遺留分額を計算する
- すでに取得した遺産や特別受益などを差し引く
- 承継する債務があれば加算する
計算式の概要は、次のとおりです。
=遺留分額
-遺留分権利者が受けた遺贈・特別受益
-遺留分権利者が取得すべき遺産の額
+遺留分権利者が承継する債務の額
民法1046条2項では、このような考え方に基づいて遺留分侵害額を算定することが定められています。

2 遺留分算定の基礎となる財産とは
最初に、「遺留分算定の基礎となる財産」を計算します。
民法1043条1項に基づく基本的な計算式は、次のとおりです。
=相続開始時の財産+算入される生前贈与-債務
相続開始時の財産には、預貯金、不動産、株式など、被相続人が亡くなった時点で所有していた財産が含まれます。
不動産がある場合には、どのような方法で評価するかによって金額が変わることがあります。特に沖縄では、土地や軍用地などの評価額が遺留分侵害額に大きく影響する場合があります。
3 相続人ごとの遺留分割合
民法1042条では、遺留分権利者全体に認められる割合を、次のように定めています。
| 相続人の構成 | 全体の遺留分割合 |
|---|---|
| 父母などの直系尊属のみ | 3分の1 |
| それ以外の場合 | 2分の1 |
相続人が複数いる場合は、全体の遺留分割合に、それぞれの法定相続分を掛けて個別の遺留分割合を計算します。
たとえば、相続人が配偶者と子2人の場合は、次のようになります。
| 相続人 | 個別の遺留分割合 |
|---|---|
| 配偶者 | 4分の1 |
| 子1人あたり | 8分の1 |
なお、兄弟姉妹には遺留分がありません。
具体的な計算例
父が4,000万円の財産を残して亡くなり、相続人が妻、長男、長女の3人だったとします。「長男にすべての財産を相続させる」という遺言書があり、生前贈与や債務はなかったものとします。
この場合、妻と長女の遺留分額は次のとおりです。
- 妻:4,000万円×4分の1=1,000万円
- 長女:4,000万円×8分の1=500万円
妻と長女が遺産を何も取得していなければ、原則として、妻は1,000万円、長女は500万円の遺留分侵害額を長男へ請求できることになります。

4 生前贈与や特別受益がある場合の計算
遺留分を計算するときは、一定の生前贈与も基礎となる財産に加算します。
相続人以外への贈与は、原則として相続開始前1年以内のものが対象です。相続人への贈与は、原則として相続開始前10年以内に行われた、婚姻、養子縁組または生計の資本としての贈与が対象となります(民法1044条)。
また、贈与をした人と受けた人の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与した場合には、それより前の贈与が算入されることもあります。
さらに、遺留分を請求する本人が、生前に住宅購入資金や事業資金などの特別受益を受けていた場合、その価額は本人の遺留分額から控除されます。
ただし、すべての金銭援助が特別受益になるわけではありません。贈与の目的、金額、被相続人の資産状況などを踏まえて判断する必要があります。
特別受益の考え方については、「生前贈与と特別受益の違いとは?」で詳しく解説しています。
5 借金・債務がある場合の計算
被相続人に借金などの債務があった場合、その全額を相続開始時の財産から控除して、遺留分算定の基礎となる財産を計算します。
たとえば、相続開始時の財産が5,000万円、債務が1,000万円で、生前贈与がなかった場合、遺留分算定の基礎となる財産は4,000万円です。
一方、最終的な遺留分侵害額を計算する際には、遺留分権利者が承継する債務の額を加算します。
このように、債務は、基礎となる財産の計算と、各相続人の遺留分侵害額の計算の双方に関係します。誰がどの債務をどの程度承継するのかも確認しなければなりません。
6 遺留分の計算で争いになりやすいポイント
遺留分侵害額の計算では、特に次の点が争いになりやすいと考えられます。
- 不動産や非上場株式をいくらと評価するか
- 預貯金の出金が生前贈与にあたるか
- 過去の送金や金銭援助が特別受益にあたるか
- 生命保険金をどのように扱うか
- 被相続人にどのような債務があったか
- 遺留分権利者自身が取得した財産をいくらと評価するか
特に不動産については、固定資産評価額、相続税評価額、実際の取引価格など、複数の評価方法があります。どの評価額を採用するかによって、請求額が大きく変わることもあります。
また、生前贈与が疑われても、通帳の出金記録だけでは、誰に何の目的で渡されたのか分からない場合があります。取引履歴、贈与契約書、不動産資料などの証拠を収集することが重要です。
7 遺留分の正確な計算は弁護士にご相談ください
遺留分侵害額を正確に計算するには、相続人の範囲、財産の評価、生前贈与、特別受益、債務などを整理する必要があります。
計算を誤ると、本来より少ない金額で合意してしまったり、反対に根拠の乏しい金額を請求して交渉が難しくなったりするおそれがあります。
実際に当事務所が取り扱った「遺言書において相続分ゼロとされた相続人が遺留分侵害額請求を行った事例」や「遺留分侵害額請求に関するお客様の声」もご覧ください。
話合いで解決できない場合には、遺留分侵害額請求の調停や訴訟を検討することになります。
弁護士法人ニライ総合法律事務所では、那覇市・沖縄市・うるま市の3拠点で、遺留分に関するご相談をお受けしています。
「自分はいくら請求できるのか知りたい」「生前贈与を含めて計算してほしい」「相手方が提示した金額が正しいか分からない」という方は、当事務所までお気軽にご相談ください。
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