
「遺言書の内容に納得できない」「遺留分を請求したのに相手が話し合いに応じない」「財産の評価や請求額について意見が合わない」
このような場合には、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立て、調停委員を介して解決を目指す方法があります。
遺留分侵害額請求は、当事者どうしの話し合いだけで解決できることもあります。もっとも、不動産の評価や生前贈与の有無、支払方法などをめぐって対立し、調停が必要になることも少なくありません。
この記事では、話し合いによる解決方法、調停の申立て方法、調停の流れ、弁護士に依頼するメリットについて解説します。
遺留分の基本的な仕組みや計算方法については、「遺留分の請求について」をご確認ください。
目次
- 1 話し合いだけでの解決は可能?
- 2 調停を申し立てる方法
- 3 調停になった場合の進め方
- 4 弁護士への相談は必須?
- 5 遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット
- 6 遺留分に関するお悩みは当事務所にご相談ください
1 話し合いだけでの解決は可能?
遺留分侵害額請求は、当事者どうしの話し合いだけで解決できることもあります。
遺留分を侵害された人が、財産を多く取得した相続人や受遺者などに請求の意思を伝え、その後、請求額、支払期限、分割払いの可否などを協議します。合意できれば、家庭裁判所の調停を利用する必要はありません。
もっとも、遺留分侵害額は、相続財産の評価、生前贈与、特別受益、債務などを踏まえて計算します。そのため、遺留分が発生していること自体には異論がなくても、不動産の評価額や生前贈与の扱いをめぐって意見が対立することがあります。
話し合いがまとまった場合には、金額や支払期限などを明確にした合意書を作成しておくことが重要です。
また、遺留分侵害額請求には期間制限があります。話し合いを続けているだけで安心せず、請求の意思表示は、後から証明できるよう内容証明郵便などで行うことを検討しましょう。裁判所も、調停の申立てだけでは権利行使の意思表示にはならず、別途、内容証明郵便等での意思表示が必要と案内しています。
期間制限については、「遺留分侵害額請求権の時効」で詳しく解説しています。
2 調停を申し立てる方法
相手方が請求に応じない場合や、請求額、財産評価、支払方法などについて合意できない場合には、家庭裁判所へ「遺留分侵害額の請求調停」を申し立てます。
調停では、裁判官と調停委員で構成される調停委員会が双方の事情を聞き、資料を確認しながら、合意による解決を目指します。一般的には、申立人と相手方がそれぞれ調停委員に事情を説明する形で進みますが、調停の進行によっては双方が同席することもあります。相手方と直接交渉する場合に比べ、冷静に話し合いやすいことが調停の特徴です。
また、遺留分侵害額請求を訴訟で進める場合には、原則として、その前に家庭裁判所の調停を経る必要があります。調停で合意できなければ、自動的に審判へ移行するわけではなく、請求額や事案に応じて地方裁判所または簡易裁判所に訴訟を提起します。
申立先と費用
原則として、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。当事者間で合意がある場合には、合意した家庭裁判所への申立ても可能です。
申立てには、収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手が必要です。郵便切手の金額や内訳は裁判所によって異なるため、申立先に確認します。
主な必要書類
- 調停申立書および相手方の人数に応じた写し
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言書の写しまたは検認調書謄本の写し
- 不動産、預貯金、有価証券、債務などの遺産資料
- 進行に関する照会回答書、送達場所等届出書
必要書類は相続関係や事案の内容によって異なり、生前贈与に関する資料など、追加の資料の提出を求められることがあります。
3 調停になった場合の進め方
遺留分侵害額の請求調停は、一般的に次のような流れで進みます。

1 遺産や生前贈与に関する資料を集める
遺言書、戸籍、預貯金資料、不動産資料、生前贈与に関する資料などを収集します。資料が不足すると、適切な請求額を算定できず、調停で十分な説明ができない可能性があります。
2 請求額を検討して調停を申し立てる
遺留分算定の基礎となる財産、遺留分割合、すでに取得した財産などを整理し、請求額を検討します。そのうえで、申立書と必要書類を家庭裁判所へ提出します。
3 家庭裁判所から調停期日の連絡が届く
申立てが受理されると、家庭裁判所が第1回調停期日を指定し、申立人と相手方に通知します。出席できない事情がある場合には、無断で欠席せず、早めに裁判所へ連絡しましょう。
4 調停委員に主張と資料を説明する
調停期日では、双方が交互に調停室へ入り、それぞれ調停委員に事情を説明する形で進むのが一般的です。
「不公平なので支払ってほしい」と伝えるだけでなく、相続財産、遺言や生前贈与、請求額の計算根拠を、資料に基づいて説明することが重要です。1回で合意できなければ、複数回の期日を重ねて話し合います。
5 調停成立または不成立
双方が合意した場合には、調停調書が作成され、調停が成立します。相手方が調停調書に定めた支払いをしない場合には、強制執行を検討できます。
合意の見込みがない場合には、調停は不成立となります。その後も請求を続ける場合には、請求額等に応じて地方裁判所または簡易裁判所に遺留分侵害額請求訴訟を提起します。
当事務所が、内容証明郵便の送付後に調停を申し立て、遺留分相当額の支払いで合意した事例については、「相続分ゼロとされた相続人が遺留分侵害額請求を行った事例」をご覧ください。
4 弁護士への相談は必須?
遺留分侵害額の請求調停は、弁護士に依頼せず、ご自身で申し立てることもできます。弁護士への依頼が法律上必須というわけではありません。
もっとも、遺留分侵害額請求では、相続人の確定、遺産の調査、不動産評価、生前贈与の扱い、請求額の計算、時効への対応など、複数の問題を検討する必要があります。
特に、次のような場合には、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。
- 相手方が支払いを拒否している
- 相続財産の全体像が分からない
- 多額の生前贈与が疑われる
- 評価が難しい不動産や株式がある
- 相手方に弁護士がついている
- 期間制限が迫っている
- 調停不成立後の訴訟も見据える必要がある
5 遺留分侵害額請求を弁護士に依頼するメリット
適切な請求額を検討できる
弁護士は、遺産、生前贈与、特別受益、債務などを確認し、法的な観点から遺留分侵害額を検討します。
相手方との直接交渉を避けられる
弁護士が代理人となることで、相手方との連絡や交渉を任せることができ、親族間の対立による精神的な負担を軽減できます。
調停に必要な書面や資料を準備できる
申立書、主張書面、証拠資料などを整理し、請求の根拠や争点を調停委員に分かりやすく伝えることができます。
調停不成立後の訴訟も見据えて対応できる
調停の段階から、将来の訴訟で必要となる主張や証拠を意識しながら、一貫した対応を進めることができます。
期間制限に対応できる
いつまでに、誰に対し、どのような方法で請求の意思表示を行うべきかを確認し、期間制限によって権利を失わないよう対応できます。

6 遺留分に関するお悩みは当事務所にご相談ください
遺留分侵害額請求は、当事者間の話し合いで解決できることもあります。しかし、相手方が請求に応じない場合や、相続財産、生前贈与、不動産評価などをめぐって争いがある場合には、家庭裁判所の調停を利用する必要があります。
納得できる解決につなげるためには、請求額の根拠を整理し、必要な資料を準備したうえで、調停委員に分かりやすく説明することが重要です。
弁護士法人ニライ総合法律事務所では、遺留分侵害額請求に関する交渉、調停、訴訟に対応しています。「自分に遺留分があるのか分からない」「相手方が話し合いに応じない」「裁判所から調停の書類が届いた」など、遺留分に関するお悩みがある方は、早めにご相談ください。
実際に当事務所へご依頼いただいた方のご感想は、「70代男性・遺留分侵害額請求のお客様の声」でご紹介しています。
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