はじめに

遺言書は、故人の最終意思を反映する大切な書面です。
しかし、その内容や作成方法に問題があると、法的に「無効」とされることがあります。
実際に遺言書が見つかっても「本当に有効なのか?」「この内容に従わなければならないのか?」と不安に思われる方も多いでしょう。

本記事では、遺言書が無効とされる主な4つのケースをわかりやすく解説します。
ご家族の遺言に疑問がある方や、これから遺言を作成しようとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

目次

1 遺言者に「意思能力」がなかった場合

遺言書を作成したときに、遺言者が自分の行為を正しく判断できる状態でなければ、その遺言は無効になる可能性があります。

判断のポイント

  • 医療記録(カルテ)や認知機能テストの結果
    長谷川式認知症スケールなどを用いた検査や介護認定資料などが参考になります。
  • 【外部リンク】長谷川式認知症スケール(HDS-R)/一般社団法人 日本老年医学会
    【関連記事】認知症の時の遺言書は無効になる?
    医師の診察

  • 遺言を書いた動機や人間関係
    たとえば、介護していた家族に多く相続させるなど合理的な理由があれば有効になりやすく、逆にそのような背景がなければ無効と判断されることがあります。
  • 生前贈与の有無やバランス
    他の相続人への生前贈与との整合性が取れていれば有効とされやすいです。
  • 遺言の内容の複雑さ
    複雑な内容は、意思能力の有無に影響を与える判断材料になります。

2 自筆証書遺言の方式に不備がある場合

自筆証書遺言には、民法で定められた厳格な形式があります。これに違反すると、遺言全体が無効となることがあります。

自筆証書遺言

よくある不備

  • 日付の記載が曖昧(例:「〇月吉日」など)
  • 全文が自筆で書かれていない
  • 署名・押印がない
  • 財産の表示が不正確(例:地番の誤りや平米数の違い)
    ※登記の際に、遺言書に記載された土地の表示(地番や面積など)が登記簿上の記載と一致していない場合、そのままでは登記手続きができないことがあります。
    たとえば、遺言書では「〇〇市A番地の土地を相続させる」と記載されていても、その後に当該土地が分筆され、「A-1」「A-2」などの枝番が付された場合、遺言書の記載だけでは具体的にどの土地を指しているのかが不明確となり、相続登記が受理されない可能性があります。
    このような場合には、遺言の解釈をめぐって家庭裁判所での確認手続(遺言確認の訴え)が必要となることもあります。

 
【関連記事】遺言書の作り方と種類をわかりやすく解説
【コラム】相続の現場から -遺言の落とし穴-

公正証書遺言なら安心

こうした形式的な不備は、公正証書遺言では起こりにくいとされています。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、法律に適合した内容・形式が整えられ、無効となるリスクが大幅に低減します。
また、公証人が本人の意思能力もある程度確認するため、後のトラブル予防にもつながります。

 
【関連記事】公正証書遺言の書き方とひな型|沖縄の相続に強い弁護士が解説

3 加除訂正の方式が正しくない場合

遺言の加除訂正を行う際には、次の要件をすべて満たす必要があります(民法968条2項)。

  1. 訂正箇所を指示すること
  2. 変更内容を付記すること
  3. その部分に署名すること
  4. 訂正箇所に押印すること

このルールを守らないと、遺言の一部、または全体が無効とされることがあります。
ただし、軽微な訂正で趣旨が変わらない場合には、有効と認められることもあります。

4 共同遺言である場合

夫婦など複数人が同一の証書で遺言する「共同遺言」は、法律上無効です(民法975条・982条)。

たとえば、夫婦が同じ紙に一緒に遺言を書いて署名しているようなケースだと、自由に撤回できなくなったりするおそれや、遺言の効力の発生時期などについて、複雑な権利関係を生じさせる恐れがあることから、認められません。
遺言は、あくまで一人ひとりが独立して作成する必要があります。

まとめ

遺言書が無効になるかどうかは、法的な判断が必要になることが多く、医療記録や当時の状況などの証拠が重要になります。
形式の誤りや意思能力の欠如といった問題があると、せっかくの遺言も無効とされてしまうリスクがあります。

もし、次のような場合は弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

  • 故人が認知症と診断されていた
  • 自筆遺言の内容や形式に不安がある
  • 登記ができないと言われた
  • 内容の訂正に不備がある
  • 夫婦の連名で遺言が書かれていた

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