任意後見契約と財産管理契約
死後の自分の財産については、遺言書を作成することで誰に遺贈するかなどをコントロール可能です。
しかし、生前に認知症を発症し、判断能力が低下した場合に、自分の財産をどのようにコントロールすればよいのでしょうか。
特に、将来認知症になった後に、自分の介護や財産管理、介護サービスの手配などを信頼できる特定の人にしっかりと任せるには、どのような方法があるのでしょうか。
そのための方法として、次の2つの契約が有効です。
- 任意後見契約
- 財産管理契約
目次
1 任意後見契約とは
任意後見契約とは、将来自分の判断能力が不十分な状態になったときに、第三者に自分の財産管理と介護などに関する身の回りの世話や介護を委ねる契約をいいます。
任意後見契約は、判断能力が不十分になって初めて効力を有する契約です。
具体的には、判断能力が衰え始めた段階で、任意後見人になることを引き受けた人(「任意後見受任者」といいます。)や親族が、家庭裁判所に対し、「任意後見監督人」を選任することを申し立てて、裁判所がこれを選任すると、任意後見受任者が任意後見人となります。
この裁判所が選任した「任意後見監督人」が、「任意後見人」の仕事を監督し、財産管理などについても家庭裁判所に報告をするので、使い込みなどの危険性は何も契約しないよりも抑えられることになります。
また、著しく不適切な任意後見人については、家庭裁判所は、本人、親族、任意後見監督人の請求により、任意後見人を解任することができることになっています。
任意後見契約は、公正証書で作成する必要があります。公正証書の作成費用は下記の通りです。
- 公証役場の手数料:1契約につき1万1,000円
それに証書の枚数が法務省令で定める枚数の計算方法により4枚を超えるときは、超える1枚ごとに250円が加算されます。 - 法務局に納める印紙代:2,600円
- 法務局への登記嘱託料:1,400円
- 書留郵便料:約540円
- 正本謄本の作成手数料:1枚250円×枚数
最近は、遺言書の作成と合わせて、下記の財産管理契約と任意後見契約を三点セットで作る場合があります。
推定相続人の一人に介護と財産管理を任せて、その分、遺言書において、当該相続人に取り分を多く相続させるという形も考えらます。
また、配偶者や子供などに病気がちの親族がいて、自分が認知症になったときに、面倒を任意後見人に見てもらうようにして、その働いた労力をねぎらうために、任意後見人の取り分を多くさせるという遺言書を作成するという方法もあります。
任意後見人に対して報酬を支払うかどうかは、当事者同士の契約によります。
弁護士などに任意後見人を依頼する場合には、報酬についても定めるのが一般的ですが、身内を任意後見人とする場合には、無報酬のこともあります。
ただ、その場合でも、遺言書などにより、相続分を多くする取り扱いが一般的になされているように思われます。
なお、任意後見人を監督する任意後見監督人に対しては、本人の財産の中から、家庭裁判所が決めた額で支払われます。
おおよそ月額1万~3万程度と言われています。
任意後見契約の締結の流れは、おおむね以下の通りです。
- ①判断能力が低下する前に、本人と任意後見人予定者との間で任意後見契約を締結する。※要公正証書
- ②任意後見の登記
- ③本人の判断能力が不十分になった時に、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見受任者が家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立てる。
- ④家庭裁判所において任意後見監督人選任
- ⑤任意後見事務開始
(1) 任意後見制度と成年後見制度の違い
成年後見制度は、認知症などの精神上の障害により、自分で財産管理ができない状態が継続している場合に利用される制度です。
この制度では、親族などの申立てに基づき、家庭裁判所が療養看護や財産管理を行う成年後見人を選任し、その後、成年後見人が本人に代わって財産の管理を行います。
この場合、認知症などで判断能力が不十分になった人に代わって、第三者が財産を管理するという点では、任意後見制度と共通しています。
ただし、任意後見では財産管理を任せる相手を本人が自ら選べるのに対し、成年後見では家庭裁判所が後見人を選任するため、この点が大きな違いです。
2 財産管理契約とは
財産管理契約とは、任意後見契約が効力を生じるまでの間、財産管理を第三者に委ねる契約です。
任意後見契約は前述のとおり、判断能力が不十分になって初めて効力が生じるので、その前から特定の人に財産管理を委ねておきたい場合には、財産管理契約と任意後見契約をセットで契約して、まず財産管理契約で特定の人に財産を委ねておいて、判断能力が不十分になった後は任意後見契約に移行するように締結する事もできます。
もっとも、財産管理契約で一番問題となるのは、あくまで財産管理契約は私的な契約なので、金融機関などの対外的な機関への効力を主張しにくい欠点があります。すなわち預金の管理などについて、代理権を授与していても、金融機関の窓口では、本人の同行が求められたりすることがある点です。
また、委任契約はいつでも解除できてしまうので、例えば不当な経済的な搾取をする親族などから相続人を守るために財産契約を締結しても、言葉たくみにして解除を誘導された場合、対抗できないという問題もあります。
財産管理契約は、委任契約なので、当然契約するときに本人の意思能力が有ることが前提です。
高齢者の財産契約が後に無効とならないように、できる限りその当時の意思能力を証明できる資料を残しておく必要があります。
例えば、かかりつけの医師による認知機能に関するテストなどを行い、診断書を取得しておくことが有効です。
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