遺言書で事業兄弟の1人に継がせるためにはどのようにすれば良いか
例えば、Xさんはある事業をやっていて、長男、次男、三男の3人の子供がいるとします。長男にこの事業を継がせたいと思っている場合、遺言書で事業の株式を長男に全て相続させるとするだけで足りるのでしょうか。
この場合、Xさんに他の相続財産がそれなりにあり、長男に相続させる株式の半分程度の財産を次男と三男にさせることができるのであれば、その相続は遺留分を侵害することがないので遺留分減殺請求をされる恐れがありません。
しかし、かかる財産がない場合、長男に株式を相続させるような形になれば被相続人の死後に遺留分減殺請求と言う形で、株式が次男と三男に取り戻される可能性もあり会社の経営上問題が発生する恐れもあります。
遺留分減殺請求権を行使された長男は、金銭によってこれを支払うことができますが、かかる金銭を用意できない場合には株式で応じざるをえなくなって、会社の支配権に影響及ぼすことも考えられます。
そこで被相続人としては次男と三男にあらかじめ放棄させることが考えられますが、相続の放棄は被相続人が死んだ後でなければ効力を生じません。相続が開始する前に、あらかじめ相続放棄をすることはできないのです。
それではどのようにすればいいでしょうか。
この場合、被相続人が生きている間に将来の相続人に対し、遺留分減殺請求を放棄する手続きをさせて、株式を全て長男に相続させる遺言を作成することが考えられます。
相続の開始前の相続放棄はできませんが、相続開始前の遺留分減殺請求は、家庭裁判所の許可を得て放棄することができます。
民法1043条1項
遺留分の放棄については
①放棄が本人の自由意志にもとづくこと
②放棄の理由に合理性と必要性があること
③代償性があること
などが必要とされています。